「生涯独身者」のためのライフプランニング

生涯独身者とは

 独身者とは、配偶者がいない人のことを言います。当たり前ですが、結婚すれば既婚者となります。
 それに対し、結婚せず、一人で生きていくことを選択した方のことを何と言うでしょうか。
 未婚者だと、いずれ結婚する気持ちがある方も含まれますので違いますね。
 ここでは、そんな方のことを「生涯独身者」とさせていただきます。

 生涯独身でいるということに対して、どういったイメージを持つでしょうか。
 気楽、悠々自適など、ポジティブなイメージを抱く方もいらっしゃるでしょう。
 しかし、将来が不安、老後が不安といったネガティブなイメージを抱く方が多いのではないでしょうか。

 誰しもが将来や老後は不安に思うことがあるでしょう。
 その中でも、生涯独身者が抱えてしまう不安を1つづつ考えていきたいと思います。

目次
1.モデルケースでは推し量れない独身者の将来設計
2.実は一番に準備をしておきたい現役時代のリスク
3.一人で生きる老後への備え
4.生涯独身者=孤独ではない

1.モデルケースでは推し量れない独身者の将来設計

 生涯独身者のライフプランニングについてですが、そもそもライフプランニングとは、一言でいうと「人生設計を見える化すること」です。
 将来こうしたいな、こういったことが不安だな、といった希望や不安を自分の未来の年表に数値化して当てはめていくことで、どの時点でどのくらいお金が必要かといったことや、どの不安に対してどれだけ備えをしておくかということが明確になります。
 頭の中で漠然と思い描いていたことがライフプランとして設計されることで目標となり、行動に移しやすくなるという利点があります。

 しかし、生涯独身者がライフプランを考えるとき参考にしようとインターネット上などの情報を見ても、結婚して子供がいる家庭をモデルケースとしてプランニングしていることが多いため、自分に当てはめて考えることが難しいということがあります。
(調べても最終的に結婚相談やマッチングアプリを紹介されて、ただ迷惑なだけで終わることもしばしば・・・)

そこで考えたいのが、人生の3大資金「住宅資金」「教育資金」「老後資金」です。

 まず、「教育資金」は必要ありません。教育資金は将来生まれてくる子供の教育に必要な資金のことですから、独身者は考える必要がない資金となります。

 次に「住宅資金」については、環境や資金的余裕、将来設計により異なってきます。

例1)親や親族と同居している、実家の相続の予定がある等で住居の心配がない
 この場合は住宅資金をライフプランに組み込む必要はないでしょう。ただし、住居の修繕やリフォームの資金は考えておいたほうがいいと思います。

例2)資金に余裕があり、老後を考えて住居を確保しておく場合
 これは、生活に余裕のある収入を得ている方で、老後を見据えて住居の購入を考えた場合です。この場合は住宅資金をライフプランに組み込む必要があります。

例3)被相続人となる子供がいないことから、住居購入に重要性を感じない等
 これは、自分が亡くなった後に残る財産は持つ必要がないという考え方です。ただしこの場合は老後資金に家賃を含めて考える必要があります。

 ここまでで考えると、教育資金や住宅資金を考える必要がないため「老後資金」は既婚者よりも貯めやすいのではないかと思えます。
 良くも悪くも、ライフイベントに関わるのは自分自身のみなので、既婚者と比べると出費が一人分のみです。
 例えば、海外旅行に行くにも旅費は一人分、結婚・出産・育児のライフイベントは考慮の必要がなく、配偶者や子供の病気やケガによる不慮の出費もないなど、どの年代になっても大きな出費が少ないといえます。
 そのため、堅実な貯蓄や投資をしやすいです。

 独身者は貯蓄額が平均よりも少ない割合が高いという傾向もありますので、資金的余裕を楽観視せず、堅実な積み立てが将来を明るくします。

2.実は一番に準備をしておきたい現役時代のリスク

 誰しもが考える、老後の不安。これは独身者や既婚者も関係なく皆さんが思うことだと思います。しかし、一番気を付けなければならないのは現役時代のリスクです。
 漠然と老後の不安について考えているとき、目先のリスクについては軽視しがちですが、現役時代を何事も無く終えられなければ計画どおりの老後はやって来ないのです。

 これについてはただ一つだけ、「健康で生き続けること」です。
 しかしそれが一番難しいことだとすぐには気付けないかもしれません。健康で働き続けている時には想像し難いかもしれませんが、日々健康に気をつかうのは大前提として、いざという時への備えをすることが重要です。

・医療保険、所得補償保険などの加入
 保険は転ばぬ先の杖です。病気になった後では入れない保険や月額が高くなる保険がほとんどです。健康なうちに自分に合った保険をよく調べて加入することが必要です。

・傷病手当金、高額医療費制度などの公的保証制度を確認しておく
 国や自治体はわざわざ教えに来てはくれません。自分で調べなければ知らなかった制度がたくさんあるはずです。

 特に独身者は現役時代のリスクを最重要視したほうがいいかもしれません。
 独身者の最大のデメリットは、いざという時に支えてくれる人がいないということです。

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3.一人で生きる老後への備え

 定年を迎えるまでに老後資金を確保できたとして、あとは何が必要でしょうか。
「健康寿命をできるだけ延ばす」「最期をどう迎えたいか考える」「死後のこと」
この3つを考え、備えておくことです。

・健康寿命をできるだけ延ばす
 これについては現役時代とかわらず健康でいることを念頭に生活するのは当然ですが、年齢とともに体の衰えはどうしても避けることができないことです。
 自分の体と向き合い、無理をせず、心身ともに健康でいるために自分には何をするのが最適かをあらかじめ考えておくといいかもしれません。

・最期をどう迎えたいかを考える
 人は必ず最期がやってきます。最期のことなんて誰にもわからないし、想像したくもないかもしれません。しかしどの場所で、どういった最期を迎えたいかを具体的に思い描いて意思表示しておくことが大事です。
 福祉サービスや施設など、自分が最期に過ごしたい場所を決めておくことで、ゴールを思い描くことが容易になります。
 衰えや病気などで体の自由がきかなくなったり意思や希望を伝えることができなくなった時のために、あらかじめ自分の希望する最期を意思表示しておくことは、悔いなく最期を迎えるために必要なことです。
 尊厳死宣言書というものもあります。これは自己で意思決定ができなくなった場合、延命治療などを希望せず安らかに最期を迎えたいという希望を書面にしたものです。
 自分が望む最期を具体的に思い描き、書面等で意思表示しておきましょう。

・死後のこと
 死後で考えられることは、葬儀と相続です。これらについては、遺言書とエンディングノートを残すことで心配事はなくなるでしょう。
 遺言書については、被相続人がいる場合、誰に何をどれだけ渡したいかといったことを書き残し、そのとおりに行ってもらうために必要な法律で定められた証書です。
 具体的に相続について希望がある場合、必ず作成しておきましょう。
 エンディングノートは、法的拘束力はありませんが、本人の意思や希望を書き残すためのものです。死後にメッセージを伝えることができますし、友人の連絡先リストや財産のリストなどを残すことで、死後の手続きがスムーズになります。
 特に財産のリストについては、IDやパスワード等を書き残しておくことを忘れずに。遺族が故人の所有物や財産などを整理するために必ず必要になります。
 そして、エンディングノートはなるべく早く作成しておくことが重要です。

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4.生涯独身者=孤独ではない

 「独身者」から想像されるネガティブイメージの中に孤独という言葉が出てきます。
 しかし、生涯独身者=孤独でしょうか?それは違います。

 近年、未婚率が増えている傾向が続いていますが、未婚である理由、生涯独身を選択する理由は個人個人で違います。
 多様化した生き方ができる世の中で、結婚しなければ孤独というレッテルを貼ることはとうの昔に終わっています。
 今は自分に一番適した生き方とは何かを自由に選択し、決定し、意思表示することができますし、それを容認することができる社会です。
 生涯独身者として生きることが自分にとって最適な生き方なら、それを誇らしく思っていいはずです。

 生涯独身者という生き方を選択したあなたへ、ここまで書き記したことが人生の一助となれば幸いです。