「セルフメディケーション税制とは?」確定申告で医療費控除の適用を受けるポイント

セルフメディケーション税制とは?

独身の方は、病気になったときに自力で病院に行けるだろうかと不安を感じることもあるでしょう。また、働けずに収入が減ることや医療費支出負担に対する心配もあります。医療費の支出があった場合は、医療費控除を賢く活用して税負担を減らすことが大切です。そこで、医療費控除について解説します。

 

1.所得控除の1つである医療費控除とは?

医療費控除とは、所得税の計算における所得控除の1つです。所得控除は14種類あり、給与所得などの所得を圧縮して税負担を減らせる効果があります。制度を理解しておけば節税につなげることが可能です。

1月から12月までの間に自分や親族のために支払った医療費を支払った場合、年間医療費支払い総額が一定額を超えると医療費控除の適用を受けることができます。医療費負担が多額になった年については、税負担が少なくなるように配慮して作られた制度です。

年間医療費支払い総額を計算する場合は、単純に医療機関や薬局で支払った金額の合計ではないことに注意が必要です。

医療保険などの入院給付金などを受け取った場合は、医療機関等に支払った金額の合計額から給付金などの合計額を差し引いた残額が対象となります。また、健康保険などから支給される高額療養費や出産育児一時金なども差し引く必要があります。

年間医療費の金額が計算できたら、次に医療費控除の金額を求めます。医療機関などへの支払い金額から給付金などを差し引いた残額から、さらに10万円を控除した金額が医療費控除額です。年間総所得金額が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額の5%を差し引くことになっています。

 

2.セルフメディケーション税制とは?

医療費控除の制度は、新たな選択肢が追加される改正が行われました。制度名は、セルフメディケーション税制です。セルフメディケーションとは、軽度の病気などになったときに、医療機関で治療を受けるのではなく、ドラッグストアなどで販売されている薬などを購入して自ら治療することをいいます。

セルフメディケーション税制は、薬などの年間購入代が一定額以上になった場合に医療費控除を受けられる仕組みで、適用を受けられる期間は平成29年1月以降に支出した医療費です。

対象となる薬は、特定一般用医療薬品等と呼ばれています。厚生労働省があらかじめ指定しているため、どんな薬でも適用を受けられるわけではありません。原則として、治療目的の薬に限られます。特定一般用医療薬品等に該当するかどうかは、ドラッグストアなどで確認してみるとよいでしょう。

購入するとレシートに該当する薬である印がつきます。適用を受ける場合は、レシートを保管しておくことが必要です。セルフメディケーション税制によって医療費控除を受けられる対象金額は、特定一般用医療薬品等の年間購入代のうち1万2000円を超える部分で、上限は8万8000円とされています。

 

3.従来の医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用

10万円を超える治療費などについて適用がある従来からの医療費控除とセルフメディケーション税制による医療費控除は選択適用です。

医療機関への支払いとドラッグストアなどでの特定一般用医療薬品などの支払いの両方がある場合でも、2つの制度を併用して利用することはできません。それぞれの医療費控除額を計算したうえで、節税効果が高い方を選択することが必要です。

例えば、医療機関への年間支払い額が20万円あり、ドラックストアでの特定一般用医療薬品等の支払い額も20万円あった場合は、従来の医療費控除の適用を受けた方が有利になります。従来の医療費控除額は20万円から10万円を控除した10万円です。一方、セルフメディケーション税制による医療費控除は20万円から1万2000円を控除した19万8000円ですが、上限8万8000円までしか適用を受けられません。結果として、従来の医療費控除の適用を受けた方が節税効果は高いです。医療機関への支払いが15万円で、特定一般用医療薬品等への支払いが20万円だった場合は、従来の医療費控除額は5万円なので、セルフメディケーション税制の適用を受けた方が有利になります。制度を正しく理解して適切な選択を行いましょう。

 

4.医療控除は確定申告が必要

医療費控除の適用を受ける場合は、確定申告が必要です。自営業などの場合は、原則として確定申告を行っているでしょうから、提出する確定申告書に医療機関などへの支払い額と適用を受ける医療費控除額を記載して税額計算を行うことで適用を受けられます。

一方、会社員などで会社が年末調整をしてくれる場合は注意が必要です。会社は、一定の例外を除いて、従業員の税額計算と納税を本人に代わって行う年末調整を行うことになっています。従業員本人は確定申告を行う必要がありません。

しかし、年末調整を受けている会社員が医療費控除の適用を受ける場合は、確定申告を行う必要があります。医療費控除は年末調整では対応してもらえないからです。

年末調整においては、医療費控除が無いものとして税額計算を行い、必要な税額を給料などから天引きして納税まで行います。医療費控除の適用を受けたい場合は、医療費控除まで含めた税額を計算した確定申告書を自ら作成して税務署に提出することが必要です。申告することによって、医療費控除の適用を受けて減少する分の税額還付が受けられます。

確定申告の経験がない場合は、国税庁サイトの「確定申告書作成コーナー」を利用するとよいでしょう。入力指示に従って必要な数値などを入力することで、確定申告書を簡単に作成できます。

 

5.医療費控除を受ける場合のポイント

医療費控除の適用を受ける場合は、注意すべきポイントが3つあります。

1つ目は、医療費支出の対象者です。独身であっても同居している両親などの親族に関する医療費が発生する可能性もあるでしょう。医療費支出は、本人分だけでなく一定の親族の分も対象となります。もれなく含めることによって節税効果を高められるでしょう。

2つ目は、同居親族のうち、誰が医療費控除の適用を受けるのが最も節税効果が高くなるかを判断したうえで適用対象者を決めることです。本人だけでなく親なども所得がある場合、医療費控除の適用を受ける人を選択することができます。所得税は、原則として、所得が多い人の税率が高くなる超過累進税率が適用されます。そのため、同居親族の中で最も所得が多い人が適用を受けると節税効果が高くなることを知っておくとよいでしょう。

3つ目は、医療機関への支出であっても医療費控除の適用対象外となる支出があることです。健康診断費用は、病気の治療ではないため、診断を受けたことによって病気が見つかり、そのまま治療をすることになるなど一定の場合を除いて適用の対象になりません。また、眼科などで処方されるコンタクトレンズ代なども、病気の治療に欠かせないなどの場合を除いて対象外となります。

 

6.医療費控除制度についてFPに相談してみよう

医療費控除の制度は、多額の医療費支出があった場合に節税できる効果がありますので積極的に利用しましょう。また、新たに創設されたセルフメディケーション税制によって、医療費控除の適用範囲が広がりましたので、ドラッグストアなどで購入した薬代のレシートはしっかり保管しておく必要があります。

ただし、医療費控除の適用を受けるためには、細かいルールも知っておく必要があり、確定申告も必要です。わからないことがある場合は、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談するとよいでしょう。医療費控除制度について詳しく説明してもらえるだけでなく、確定申告に関しても税制の説明はもちろん、申告書作成について税理士を紹介してもらえるなどの対応が期待できます。